THz回折格子

Tydex社製の回折格子は、THz周波数帯のスペクトル測定用の、レリーフ型透過型回折格子です。 この回折格子の規則的な構造は、透明な基板に平行な切り込み(溝)を入れることによって作られます。 基板は、TPX(ポリメチルペンテン)やZEONEX(環状オレフィンポリマー)など、THz領域で透過する素材で作られています。

<応用例>
- THz分光
- THz診断装置
- 電気光学装置
- 宇宙を含む天文・天体物理学的用途
- 材料研究

グレーティングは、0.3〜3THzの範囲内で以下の4つの標準透過帯域を用意しております。
@ 0.28-0.55 THz
A 0.49-0.98 THz
B 0.87-1.75 THz
C 1.56-3.12 THz
他の帯域もお客様のご要望に応じて製造可能です。

THz回折格子は通常、一辺が35mmから70mmの正方形に作られています。その他の形状やサイズもご要望に応じて対応可能です。
回折格子は、用途に応じて、収束レンズの有無にかかわらずさまざまな光学配置で使用することができます。

溝加工前のTPXとZEONEXの両面研磨板の透過率スペクトルは以下の通りです。

回折格子のパラメータ、回折波の強度、個々の単色波の一次最大角度は、フラウンホーファー近似を用いて計算されます。この動作を検証し、計算値と実際のパラメータを比較するために、様々な光学配置で、異なるテラヘルツ放射源を用いてグレーティングの特性を測定しました。
用いた光源は2つです。1つ目はFIR-laserで、チューナブルCO2レーザー(Peter the Great St.Petersburg Polytechnic University)によって光学的に励起されたサブミリメーター・メタノール・ベーパー・レーザーです。 もう一つは、自由電子レーザーであるFEL(RAS、ブドカー核物理研究所、シベリアシンクロトロンおよびTHz放射センター)です。
図3および図4は、FIRレーザーを放射源として用いた場合の、間隔d=250μmのTPXおよびZEONEXグレーティングの単色波強度(λ=118μm)対回折角のグラフです。
図5と図6は、FELで照射した同じグレーティングの単色波強度(λ=141μm)と回折角の関係を示しています。回折格子と放射線センサーの間に収束レンズを配置しました。
これらのプロットを比較すると、最初のケースでは、ゼロ次と1次の最大値がレンズ配置の場合よりも広くなっていることがわかります。 これは、収束レンズによって平行ビームが収束されることに起因します。使用者は実験を設計する際にこの点を考慮する必要があります。
放射線源の特性(パワー、ビーム形状、エネルギー分布など)を調べるために回折格子を用いる場合、レンズは不要です。 しかし、スペクトル線を分解する場合はレンズが必要になります。

レイリー基準で定められた透過帯を持つ回折格子の場合、回折する単色波の強度は波長依存性があります。 帯域の中央で最大となり、その境界付近で低下します。 例えば、図3〜6に示すように、250μm間隔のTPXとZEONEX回折格子(透過帯域1.56〜3.12THz、96〜192μm)では、λ=141μm単色波の1次最大強度はλ=118μm単色波の数倍であることがわかります (1番目は透過帯域の真ん中、2番目は端に近い)。これは、フラウンホーファー近似を用いて計算された個々の単色波の理論的な回折波強度や1次最大角度と一致します。
回折格子の試験時に使用した放射源や光学配置が異なるため、以下の強度は任意の単位で表示されています。

レリーフ型THz回折格子の研究データは、その高い光学効率と動作極大の分解能を示します。 このように回折格子は、低電力源を含む放射線源のスペクトルを研究するために効率的に使用することができ、これはTHz周波数帯の研究にとって重要な機能となります。


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